ハチの巣は、見つけてから業者を探すまでの時間が短い依頼です。今日中に何とかしたい、という状態で検索し、いちばん上に出た「550円〜」に電話する。その流れが、相談件数の増え方にそのまま表れています。
この記事では、国民生活センターと消費者庁が公表した資料の数字だけを使って、どれくらいの規模で何が起きているのかを見ます。金額の相場は扱いません(後述しますが、そもそも公的な統計が存在しません)。
害虫のなかで、ハチの相談がいちばん多い
国民生活センターが2024年4月24日に公表したネットの価格と全然違う!?害虫・害獣駆除のトラブルにご注意によると、PIO-NETに寄せられた害虫・害獣駆除(シロアリを除く)の相談は次のように推移しています。
| 年度 | 相談件数(全体) |
|---|---|
| 2018年度 | 854件 |
| 2019年度 | 907件 |
| 2020年度 | 972件 |
| 2021年度 | 1,383件 |
| 2022年度 | 1,612件 |
| 2023年度 | 2,290件 |
5年で2.7倍です。害虫別に見ると、ハチは2018年度225件から2023年度752件へ増え、害虫別で最多でした。
| 害虫 | 2018年度 | 2023年度 |
|---|---|---|
| ハチ | 225件 | 752件 |
| ゴキブリ | 43件 | 611件 |
| ネズミ | 229件 | 385件 |
| コウモリ | 54件 | 114件 |
伸び率ではゴキブリが際立ちますが、件数の絶対値ではハチが頭ひとつ抜けています。相談統計全体の読み方は害虫駆除の相談は5年で2.7倍・20代が最多で扱っています。
表示価格と請求額は、どれくらい離れるのか
同じ資料が挙げている事例の契約金額のうち、ハチに関するものはこれです。
スズメバチの駆除で、当初150万円と言われ、約100万円を支払った
ここで読み取るべきは「スズメバチの駆除は100万円かかる」ではありません。広告や電話口で示された価格と、実際に請求された額が桁の単位で離れうるという一点です。150万円が約100万円になった経緯も、値引きされたから得だ、という話ではありません。最初の提示額に根拠がなければ、値引き後の額にも根拠がないからです。
同じ資料には、ゴキブリ約10万円・約15万円、ネズミ約13万円、コウモリ約130万円という事例も並んでいます。これらは相談として寄せられた事例の金額であって、相場ではありません。害虫駆除には公的な料金統計が存在しないため、このサイトでは相場表を作っていません。「◯◯円〜」という表示が十数万円になる仕組みそのものは「550円〜」が十数万円になる仕組みで分解しています。
相談しているのは誰か
2023年度の相談者の内訳も公表されています。
| 年代 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 10歳代 | 113件 | 5.5% |
| 20歳代 | 439件 | 21.5% |
| 30歳代 | 267件 | 13.1% |
| 40歳代 | 165件 | 8.1% |
| 50歳代 | 260件 | 12.7% |
| 60歳代 | 290件 | 14.2% |
| 70歳代 | 283件 | 13.9% |
| 80歳代以上 | 226件 | 11.1% |
最も多いのは20歳代で21.5%。性別では女性が1,452件(66.2%)、男性が740件(33.8%)でした。訪問販売の被害というと高齢者を思い浮かべますが、この分野は違います。検索して、広告を見て、自分で電話をかけた層が中心だということです。
消費者庁が注意喚起した表示
消費者庁は令和6年9月30日、消費者安全法38条1項に基づく注意喚起を公表しました。対象は株式会社ORBITAL PERIOD(東京都豊島区)で、同社が運営していたのは「害虫110番」というサイトです。
公表資料に挙げられている表示は次のようなものでした。
- 「出張見積り0円」
- 「関東エリア 最安レベルに挑戦! 追加料金一切なし! 税込550円〜」
- 「シンプル料金&明朗会計」
実態は数万円から十数万円の高額請求だった、というのが消費者庁の指摘です。
ここで必ず区別してください。消費者庁が注意喚起したのは「害虫110番」であり、別法人が運営する「害虫駆除110番」とはまったくの別物です。名前が似ているだけで、同じ事業者ではありません。この記事は特定の事業者を批判するものではなく、行政が公表した事実を社名とサイト名を正確に併記して紹介しています。
依頼する前に確認すること
| 確認すること | 具体的に |
|---|---|
| 作業前に、書面で総額を出してもらう | 口頭の見積もりは残りません。金額と作業範囲が書かれた紙(またはメール・PDF)を、作業を始める前に受け取ります |
| 追加料金が発生する条件を聞く | 「一式」だけの見積書は比較できません。何をしたらいくら加算されるのか、巣が複数あった場合はどうなるのかを、契約前に確認します |
| 高所作業車が要るかどうかで金額が変わる | 江戸川区の補助制度は、除去経費の3分の1・上限7千円ですが、高所作業車を使用した場合は上限1万4千円です(江戸川区・2026年6月時点)。行政の側も、高所作業を別枠の費用と見ていることが分かります。自宅の巣の高さは、電話の段階で伝えてください |
| その場で契約しない | 相見積もりを取る時間を確保します。判断に迷ったら消費者ホットライン 188 に相談できます |
自治体の補助や無料撤去が使えるなら、そもそも高額請求の土俵に乗らずに済みます。制度の有無は市区町村が駆除してくれるのかで確認してください。ただし成田市のように、市を通じて依頼した場合のみ補助対象で事後申請は不可、という自治体もあります。呼ぶ前に一本電話する順序が結局いちばん安く済みます。
契約してしまった後——クーリング・オフの起算日
消費者庁の特定商取引法ガイドは、訪問販売について「法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、書面又は電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除ができます」としています。
見落とされやすいのは起算日です。作業をした日でも、支払った日でもなく、法定書面を受け取った日を1日目として数えます。そもそも書面を渡されていないケースもあり、その場合の扱いは状況によって変わります。また、事業者の虚偽の説明で誤認した場合は、8日を過ぎていても解除できることがあると同ガイドは述べています。
自分で電話して呼んだ業者との契約が訪問販売にあたるかどうかは、契約の状況によって判断が分かれます。ここは自己判断せず、消費者ホットライン188か、お住まいの消費生活センターへ。日数の数え方と通知の出し方は訪問販売は8日以内なら解約できるで詳しく整理しています。期限は書面を受け取った日から進んでいるので、迷っている間に日が過ぎないようにしてください。