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ハチの巣は役所が取ってくれるのか 江東区と葛飾区の条件を読み比べる

「ハチの巣ができた。役所に言えば取ってくれるのか」という質問に、全国共通の答えはありません。取る自治体と、はっきり「取りません」と書いている自治体が、どちらも実在します

しかも取ってくれる自治体でも、無条件ではありません。巣の高さ、ハチの種類、時期、建物の所有関係といった条件が細かく設定されていて、ひとつでも外れると対象から落ちます。ここでは実際に無料で撤去している2つの区の条件を並べて、どこで線が引かれているのかを見ていきます。あわせて、そもそも取らなくてよい場合についても書きます。

撤去する区の条件は、こうやって細かく分かれている

東京都の江東区と葛飾区は、どちらもスズメバチの巣を無料で処理していますが、条件の作り方が違います。

項目江東区葛飾区
誰が駆除するか区(事前に営巣状況の確認調査あり)すぐやる課(業者委託を含む)
対象のハチスズメバチの巣のみスズメバチ
巣の高さ概ね3メートル以下記載なし
巣の状態4月〜10月で現に使用中のもの自ら居住する住居等に露出して作られた巣
通報者の立場私有地の管理者(所有者)であること所有者・居住者
立会い記載なし(事前の確認調査あり)所有者・居住者の立会いが必要
除外される建物記載なし法人・管理組合が管理する建物は対象外
その他の条件周囲に破損のおそれのあるものがないこと
アシナガバチ区は撤去しない原則自己駆除。職員が駆除方法を指導
ページ更新日2023年12月4日2021年9月1日

同じ「スズメバチなら無料」でも、外れ方が違います。江東区は高さと時期で切っていて、3メートルを超える位置の巣や、11月以降の使われていない巣は対象になりません。葛飾区は巣の見え方と建物の管理者で切っていて、壁の中や屋根裏に入り込んで露出していない巣、分譲マンションの管理組合が管理する部分の巣は外れます。

「うちの巣は取ってもらえるか」を判断するには、この条件のどこに自分が当てはまるかを一つずつ照合するしかありません。そしてこれは江東区と葛飾区の話であって、他の自治体はまた別の条件を持っています。

「駆除は行っていません」と書いている自治体もある

一方で、公式ページにはっきりと駆除しない旨を書いている自治体があります。

  • 横浜市(2025年11月10日更新)……「福祉保健センターでは巣の駆除は行っていませんが」として、相談・駆除業者の紹介・防護服および駆除器具の貸出の3つを案内しています。
  • 松山市(2026年2月4日更新)……「松山市では私有地にあるスズメバチなどのハチの巣の駆除を行っていません」「蜂の巣の駆除は有料です」と明記。愛媛県ペストコントロール協会(089-913-1064)を紹介しています。
  • 水戸市消防局(2026年4月2日更新)……「市役所や消防署では、ハチの駆除は行っておりません」と書かれています。ただし同じページで駆除費用の補助制度を案内しており、消防署では防護服の無料貸出もしています。

水戸市の例が示すとおり、「駆除しない」と「何もしない」は別です。撤去はしないが費用を補助する、道具は貸す、業者は紹介するという自治体が相当数あります。金額の制度についてはスズメバチの巣の駆除に補助金がある自治体で5市区を比較しました。

なお、こうした公式ページのどれを見ても「消防署に電話すれば来てくれる」とは書かれていません。消防が出動するのは火災や救急の場面であって、私有地のハチの巣は原則としてその対象ではない、という整理になっています。

「必ずしも撤去が必要ではありません」という一文

条件表よりも先に読んでほしいのが、江東区のページに書かれている次の一文です。

巣が玄関や物干し場の近くにある場合等、生活に支障をきたす場合以外は、必ずしも撤去が必要ではありません。

撤去する側の区が、撤去しなくてよい場合があると明記しています。これは費用を惜しんでいるという話ではなく、巣に近づかないで済むなら、それが一番安全だからです。

ここで効いてくるのが、ハチの生活史です。練馬区のスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの習性と見分け方(2018年12月6日更新)によれば、スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチはいずれも越冬しません。巣は一年限りで、翌年また同じ巣が使われることはありません。

つまり、次のような条件がそろっているなら、取らずに冬を待つという選択肢が現実的です。

  • 巣が、人の通り道・洗濯物を干す場所・窓の開閉位置から離れている
  • 子どもやペットが近づける高さ・場所にない
  • 巣に近づかずに済む生活動線が組める
  • 巣の前を通らないと出入りできない、といった事情がない

逆に、玄関の真上、勝手口の脇、エアコン室外機の裏、物干し竿のすぐ横、といった場所であれば、これは「生活に支障をきたす場合」です。放置するとハチのほうから接近されることになるので、自治体か業者に相談する側に倒してください。

ただし、放置を選ぶ場合でも巣は秋にかけて大きくなります。練馬区の資料では、スズメバチの巣の全盛期は9月から10月で直径20〜30センチに達するとされています。夏の初めに「小さいから大丈夫」と判断した場所が、秋には別物になっていることがあります。判断は一度で終わらせず、たまに遠目で確認してください。

アシナガバチは、多くの自治体で対象外になる

条件表を見て気づくのは、アシナガバチの扱いが共通して冷たいことです。

江東区は「アシナガバチは区は撤去しない」、葛飾区は「原則自己駆除」で職員が駆除方法を指導するという案内です。補助金制度でも、静岡市はアシナガバチを対象外とし、成田市はスズメバチ亜科のみ、高崎市もスズメバチ以外は対象外としています。

理由は攻撃性の差にあります。練馬区の資料はスズメバチについて「巣を守る本能が非常に強い」とする一方、アシナガバチについては「巣を刺激しなければ人を刺さない」と書いています。行政が公費を投じる線を、この差のところで引いているわけです。

だからこそ、まず種類を確定させないと話が始まりません。巣の形で見分けがつくので、スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチの巣の見分け方を先に見てください。とっくりを逆さにした形か、六角形の穴が下や横を向いて露出しているかで、その後の選択肢が変わります。

なお、自治体が「自己駆除」と案内していることと、誰でも安全にできることは同じではありません。刺されることそのもののリスクは刺されるのはいつ・どこかに統計でまとめました。

電話する前に、これだけ手元に用意しておく

自治体の窓口でも業者でも、最初に聞かれることはだいたい同じです。先に調べておくと、対象になるかどうかがその場で判明します。

聞かれること用意しておく形
巣の場所「軒下」「屋根裏」「植え込みの中」「エアコン室外機の裏」など具体的に。屋外か、壁の中に入っているか
巣の高さ地面からおよその高さ。江東区のように「概ね3メートル以下」で切る自治体があるため、脚立で届くかどうかも伝えられるとよい
巣の大きさ手のひら大/ソフトボール大/バレーボール大、のような身近な物との比較で
巣が露出しているか外から巣そのものが見えるか、それとも隙間にハチが出入りしているだけか
ハチの見た目体の大きさ(2センチ程度か3センチを超えるか)、色と模様。近づかずに遠くから撮った写真があれば確実
建物の所有関係持ち家か、賃貸か、分譲マンションの共有部か。法人名義か。葛飾区のように法人・管理組合管理を除外する自治体がある
ハチの出入りの様子何匹くらいが出入りしているか、今も使われているか

写真は有効ですが、撮るために近づかないでください。ズームで遠くから撮れば十分です。また、賃貸にお住まいなら、自治体に電話する前に管理会社か大家に連絡するのが先です。共用部分の場合、そもそも入居者が手配する話ではないことがあります。

確認の順番

まとめると、次の順で確認するのが無駄がありません。

  1. ハチの種類と巣の形を、遠くから確認する
  2. お住まいの自治体の公式ページで、駆除するのか・補助するのか・何もしないのかを確かめる
  3. 撤去してもらえる条件に当てはまるかを、高さ・時期・所有関係で照合する
  4. 当てはまらない場合、そもそも取る必要がある位置なのかを考え直す
  5. それでも取る必要があるなら、補助制度の有無と申請の順番を確認してから業者を手配する

本文中の自治体の条件は、いずれも2026年7月時点で各公式ページに掲載されていた内容です。江東区は2023年12月、葛飾区は2021年9月が最終更新のため、実際に依頼する前に必ず最新のページか電話で確認してください。

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