床下からシロアリの被害が見つかったとき、真っ先に浮かぶのが「保険や保証で直せないか」という考えだと思います。新築のときに10年の保険に入っていたはずだ、防除業者から5年保証の書面をもらっていたはずだ、というように。
結論から書くと、この2つはまったく別の制度で、それぞれ書かれていることを個別に読む必要があります。しかも片方には、読み飛ばせない一行が入っています。以下、2026年7月時点の公開資料に沿って見ていきます。なお、保険金が支払われるかどうかの最終的な判断は個別の契約と約款によります。この記事は約款を読むときの手がかりを示すものだと考えてください。
まもりすまい保険が対象にしているもの
住宅保証機構のまもりすまい保険(新築)は、住宅品質確保法(品確法)の基本構造部分を対象とし、期間は10年です。新築住宅を引き渡す事業者が加入する、いわゆる住宅瑕疵担保責任保険にあたるものです。
同ページの保険内容には、支払対象外となる事由も列挙されています。その中に次の記載があります。
住宅の虫食いまたは瑕疵によらない保険付保住宅の自然の消耗等の事由
ここに書かれているのは「虫食い」という語です。 この資料には「シロアリ」「白蟻」という語は出てきません。引用するときは原文の表現のままにしておくべきところなので、当サイトでも言い換えずにそのまま示します。
この一行をどう受け取るか
「虫食い」という語が支払対象外に挙がっている以上、シロアリによる被害がこの免責に当たるかどうかは、個別の判断になります。 ここを「シロアリは対象外です」と言い切ってしまうのは、資料に書いていないことを足すことになります。逆に「シロアリのことではないので使える」と読むのも同じくらい危ういと思います。
実務的に取れる行動は一つです。契約書と約款を出して、この免責条項の文言を確認する。 そのうえで、加入先(住宅を引き渡した事業者、または保険法人)に、自分のケースがどう扱われるかを問い合わせる。書面で回答をもらえるなら、それが一番確かです。
被害の原因が施工の瑕疵にあるのか、経年の中で発生した虫害なのかによって、話の筋も変わってきます。この切り分けは素人には難しいので、床下の状態を第三者に見てもらった記録があると説明しやすくなります。
業者の「5年保証」は、瑕疵保険とは別のもの
防除工事のあとに渡される保証書は、施工した会社が自社で出しているものです。品確法にもとづく保険とは制度が違います。
この5年という数字の出どころは、日本しろあり対策協会の防除施工標準仕様書(令和7年10月1日発行)です。ただし仕様書の書き方は「5年保証」ではありません。「5年を目途に再処理をする」という表現です。
つまり、仕様書が言っているのは施工のサイクルであって、5年間の結果を誰かが保証するという話ではありません。にもかかわらず、市場では「5年保証」という言葉が広く使われています。業界の技術文書の「目途」と、契約書の「保証」は、同じ5年でも意味が違うということです。協会自身が「5年を過ぎたからといってすぐに被害が出るわけではありません」と書いていることも含め、この5年の性質についてはシロアリ防除は5年ごとに必要かにまとめました。
保証書で確認すること
自社保証である以上、中身は会社ごとに違います。契約前に、あるいは今手元にある書面で、次の点を確認してください。
| 確認すること | なぜ見るか |
|---|---|
| 保証書が発行されるか | 口頭の「5年保証」だけでは内容を確かめられない |
| 保証の対象範囲 | 施工した箇所だけか、建物全体か。増築部分はどうか |
| 再発したときに何をするのか | 無償で再施工するのか、駆除だけか、点検だけか |
| 木材の補修は含まれるか | 駆除と、食害を受けた木材の補修は別の工事になることがある |
| 免責事項 | 雨漏り・漏水があった場合、床下の状況が変わった場合など |
| 施工会社が5年後も存在するか | 自社保証は、会社が無くなれば履行されない |
最後の行が実は一番重いところです。保証は発行した会社が続いていることが前提です。設立年、所在地、固定電話の有無、協会への加盟状況などは、契約前に確認できます。しろあり防除施工士の検索や防除薬剤製造・販売業者名簿が協会のサイトで公開されているので、そこと突き合わせる方法は見積書を標準仕様書の数値で検算するに書きました。
保証を理由に契約を急がされたとき
「今なら5年保証が付きます」「保証期間が切れているので今日中に」という説明で契約を促されることがあります。保証は契約の付属条件であって、契約を急ぐ理由にはなりません。
訪問販売で契約してしまった場合、特定商取引法の定める書面の受領日を1日目として8日以内であればクーリング・オフができるとされています。期間が過ぎたあとでも、虚偽の説明による契約などでは解約できる場合があります。手続きの具体的な進め方は訪問販売は8日以内なら解約できるにまとめています。
迷ったときの相談先
保険が使えるか、保証の範囲に入るかという判断は、契約書と約款を読まずには決まりません。そして約款の解釈は、当サイトの役割を超えます。ここまで書いてきたことは、あくまで「公開されている資料にこう書いてある」という事実の紹介です。
- まず手元の契約書と保証書、保険の約款を探す
- 加入先・施工会社に、自分のケースの扱いを問い合わせる(できれば書面で)
- 事業者とのやりとりで納得できない場合や、契約自体に不安がある場合は、消費者ホットライン188に相談する
188は全国どこからでもかかる番号で、地域の消費生活センター等につながります。契約書・保証書・見積書・やりとりの記録を手元に置いてから電話すると、話が早く進みます。
この記事の要点
- まもりすまい保険(新築)は品確法の基本構造部分を10年対象とする
- 同保険の支払対象外に「住宅の虫食いまたは瑕疵によらない保険付保住宅の自然の消耗等の事由」が明記されている
- この資料に「シロアリ」という語は出てこないため、シロアリ被害がこの免責に当たるかは個別判断になる。契約書と約款を必ず確認する
- 業者が付ける5年保証は自社保証であり、瑕疵保険とは別の制度
- 協会の標準仕様書の表現は「5年保証」ではなく「5年を目途に再処理をする」
- 保証書は、対象範囲・再発時の対応・免責・会社が存続するかまで見る
- 判断に迷う場合は消費者ホットライン188へ