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シロアリ防除は5年ごとに必要か──協会自身は「義務」と書いていない

シロアリ防除の薬剤は5年で有効期限を迎える。これは業界団体自身が公表している事実です。ただし「5年たったら再施工しなければならない」という義務は、その業界団体の文章のどこにも書かれていません。書かれているのは「お勧めします」という推奨です。この差は、玄関先で契約を迫られたときに効いてきます。ここでは公益社団法人日本しろあり対策協会の一次資料が実際にどう書いているかを引用し、再施工を検討するかどうかの判断材料を並べます。

協会のQ&Aは「義務」ではなく「お勧め」と書いている

協会の5年経ったら必ず再施工しなければならないのかというQ&Aには、2026年7月時点で次のように書かれています。

薬剤の有効期限は5年です。

5年を過ぎたからといってすぐに被害が出るわけではありませんが、シロアリを確実に防ぐには再施工をお勧めします。

読みどころは後半です。防除を仕事にしている業界団体が、自分たちのサイトで「すぐに被害が出るわけではありません」と書いている。 そのうえで「お勧めします」と続けています。お勧めは推奨であって、義務ではありません。

つまり、5年という数字は「薬剤の有効期限」の話であり、「5年目に必ず工事をする期限」の話ではない、という整理になります。

標準仕様書も「保証」ではなく「目途」という言葉を使っている

同じ協会が発行している防除施工標準仕様書(令和7年10月1日発行、2026年7月時点で公開中)でも、書き方は同じ方向です。この仕様書は「5年保証」とは書かず、「5年を目途に再処理をする」という表現を採っています。

「保証」と「目途」は違う言葉です。目途は目安であり、その日を過ぎた瞬間に何かが失われるという意味ではありません。業界の技術文書がこの言葉を選んでいる、という事実そのものが、5年という数字の性質を示しています。

なお、業者が付ける「5年保証」と、新築住宅の瑕疵保険はまったくの別物です。住宅保証機構の保険が何を対象外にしているかは、シロアリ被害に住宅の保険や保証は使えるかで約款の原文を引いて確かめました。

「法律で義務です」と言われたときにどう受け取るか

訪問してきた相手から「5年たったので法律で義務です」と説明されることがあります。少なくとも、業界団体である協会自身は義務とは書いていません。「法律で義務だから今日中に契約を」という説明は、協会の公表内容とは一致していないと考えてよいと思います。

新築時の防腐・防蟻については、住宅金融支援機構の融資基準など、仕様を定めた文書が別に存在します。そちらは新築・リフォーム時のシロアリ対策で扱いますが、いずれも建てるときの仕様の話で、既存の家に5年ごとの再施工を課すものではありません。

点検商法の相談は、3年で2倍以上に増えている

国民生活センターの訪問販売によるリフォーム工事・点検商法(2025年8月更新、2026年7月時点)によると、点検商法に関する相談件数は次のように推移しています。

年度点検商法の相談件数訪問販売によるリフォーム工事
2022年度8,166件10,099件
2023年度12,550件11,878件
2024年度19,215件9,820件

点検商法は3年で2倍以上になっています。点検商法とは、不安をあおって必要のない工事を契約させる手口を指し、特に高齢者が狙われやすいと同センターは整理しています。

同センターの消費者トラブルFAQには、「シロアリがいる」と写真を見せられ…という相談への回答が置かれています。ここでは、特定商取引法の定める書面の受領日を1日目として8日以内であればクーリング・オフができること、また期間が過ぎたあとでも虚偽の説明による契約などでは解約できる場合があることが案内されています。手続きの詳細は訪問販売は8日以内なら解約できるにまとめています。

再施工を考えるかどうかの判断材料

年数だけで決めない、というのがこの記事の結論です。実際に見るところを整理すると次のようになります。

見るところ落ち着いて考えてよい方向早めに見てもらいたい方向
前回施工からの年数5年未満5年以上、または施工歴が不明
床下の湿気乾いていて通気が取れている常に湿っている、水漏れの跡がある
羽アリ見ていない室内で見た、窓際に羽が落ちていた
床の状態変化なしきしむ、沈む、部分的に柔らかい
木部の見え方異常なし蟻道(土でできた細い道)がある
地域にいる種類ヤマトシロアリのみの地域イエシロアリの分布域

最後の行は見落とされがちです。種類によって被害の広がり方が違うため、同じ「5年経過」でも急ぐ度合いが変わります。 イエシロアリは水を運んで乾いた木材まで加害し、被害が建物全体に及ぶことがあります。この差についてはヤマトシロアリとイエシロアリの違いで分布と習性を比べています。

業者を呼ばずに済ませられる範囲

床下点検口から懐中電灯で覗いて、蟻道や羽アリの死骸、水濡れの跡がないかを見る。これは自分でもできます。狭い床下に潜り込む必要はありません。点検口から見える範囲だけでも、湿気の状態はある程度わかります。

そのうえで気になる点があれば、点検と見積もりだけを先に依頼します。契約は別の日でかまいません。見積書が「一式」としか書かれていないときの確認方法は、見積書を標準仕様書の数値で検算するにまとめました。数量と単価に分けて書いてもらうだけで、比較できる書面になります。

この記事の要点

  • 協会は「薬剤の有効期限は5年」としつつ、「5年を過ぎたからといってすぐに被害が出るわけではありません」と明記している(2026年7月時点)
  • 標準仕様書の表現は「保証」ではなく「5年を目途に再処理をする」
  • したがって、5年経過を理由にした「義務」という説明は、協会の公表内容とは一致しない
  • 点検商法の相談は2022年度8,166件から2024年度19,215件に増えている
  • 判断は年数だけでなく、湿気・羽アリ・床の状態・地域の種類を合わせて見る
  • 契約してしまった場合でも、書面受領日から8日以内はクーリング・オフの対象になりうる。困ったときは消費者ホットライン188に相談できる

床下の状態を、契約の前に見てもらう

5年という年数だけでは、再施工が要るかどうかは決まりません。まず点検と見積もりだけを依頼し、数量と単価が書かれた書面を受け取ってから考えても遅くありません。

点検・見積もりを依頼する

その場での契約を求められた場合は、いったん持ち帰って構いません。

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