同じ「シロアリ」でも、種類が違えば被害の広がり方がまったく違います。床下の一部だけが傷むのか、それとも2階まで含めて建物全体に及ぶのか。この差を決めているのが種類です。そして種類は、住んでいる地域である程度決まります。
公益社団法人日本しろあり対策協会が公開している分布と加害習性の資料を、そのまま並べて読んでみます。数字と表現はすべて2026年7月時点の同協会サイトの記載によります。
どこに、どの種類がいるのか
協会の建築物を加害するシロアリの種類と分布には、次のように書かれています。
| 種類 | 分布 |
|---|---|
| ヤマトシロアリ | 北海道北部を除く日本全土 |
| イエシロアリ | 神奈川県以西の海岸線に沿った温暖な地域と千葉県の一部、それに南西諸島、小笠原諸島 |
| アメリカカンザイシロアリ | 乾材を加害する種類で、近年被害が増加していると記載されている |
| ダイコクシロアリ | 奄美大島以南 |
ヤマトシロアリは、ほぼ日本中にいます。 北海道北部を除く全土、という書き方なので、床下がある木造住宅に住んでいるなら、まずこの種類が前提になります。
一方でイエシロアリは範囲が限られます。神奈川県以西の海岸線沿いという条件が付いているので、内陸に住んでいる場合と、海沿いに住んでいる場合とで話が変わります。千葉県の一部が別に挙げられているのも、この分布が単純な西日本/東日本の区分ではないことを示しています。
アメリカカンザイシロアリは、上の2種とは前提が違います。乾いた木材を加害する種類なので、床下の湿気を管理するという発想がそのままでは当てはまりません。協会は近年被害が増加しているものとして挙げています。
加害習性は、ここが違う
協会のヤマトシロアリとイエシロアリの加害習性から、両者を項目ごとに並べます。
| 項目 | ヤマトシロアリ | イエシロアリ |
|---|---|---|
| 巣の作り方 | 塊状の巣を作らず、加害している部分がそのまま巣になる | 建物内や土中に大きな塊状の巣を作る |
| コロニーの規模 | (協会の同ページに数の記載なし) | 通常は数十万頭、大きなコロニーは100万頭 |
| 好む環境 | 湿潤を好み、建物の下部が中心 | 水を運ぶため、乾いた木材も加害する |
| 加害の広がり | 建物下部中心 | 建物全体に及ぶ |
| 加害箇所の状態 | 湿って汚い | 乾いてきれい |
表の下2行が、この記事でいちばん伝えたいところです。
イエシロアリは自分で水を運びます。 そのため、乾いているから安全という前提が成り立ちません。床下だけでなく、柱を伝って上階の木材まで被害が及ぶことがあります。協会が「建物全体に及ぶ」と明記しているのはそういう意味です。
コロニーの規模も桁が違います。通常で数十万頭、大きなもので100万頭という数字は、被害が見つかった時点ですでに広範囲に及んでいる可能性を示します。
「加害箇所は湿って汚い/乾いてきれい」という見分け方
協会の表現をそのまま引くと、ヤマトシロアリの加害箇所は「湿って汚い」、イエシロアリの加害箇所は「乾いてきれい」です。
床下を覗いたときに、傷んだ木材の周りが濡れて泥っぽいのか、それとも乾いた状態で内部が食われているのか。この違いは、素人が見ても印象として残ります。もちろんこれだけで種類を断定はできませんが、業者に説明するときの材料にはなります。「乾いた状態で内部が空洞になっている」と伝えられれば、話が早くなります。
自分の地域にどちらがいるかで、何が変わるか
種類の話は生態の豆知識ではなく、判断に直結します。
対策の緊急度が変わります。 ヤマトシロアリは建物下部が中心なので、床下の湿気を管理し、傷んだ部分を特定して処置するという順序が取れます。イエシロアリの分布域で被害の兆候が出ている場合は、建物全体に及びうる前提で見てもらう必要があります。同じ「羽アリを見た」でも、次の一手の急ぎ方が違います。
点検してもらう範囲が変わります。 イエシロアリは上階まで加害しうるので、床下だけを見て終わりにはなりません。見積書に床下しか入っていないなら、なぜそれで足りると判断したのかを聞くところです。見積書の読み方は見積書を標準仕様書の数値で検算するにまとめています。処理範囲と数量を書面で出してもらうと、この確認がしやすくなります。
再施工を考えるタイミングの重みも変わります。 前回の施工から5年たったという事実だけでは、再施工が必要かどうかは決まりません。協会自身が「5年を過ぎたからといってすぐに被害が出るわけではありません」と書いています。ただし、その判断材料の一つとして地域の種類が入ってきます。詳しくはシロアリ防除は5年ごとに必要かを読んでください。
新築のときに効いてくる違い
これから建てる、あるいは大きく改修するなら、種類の違いは設計の話になります。乾材を加害する種類がいる以上、「湿気対策さえすればよい」とは言い切れません。住宅金融支援機構の融資基準では、地面からの高さ1m以内の部分について、薬剤以外の選択肢も含めた複数の方法が並べられています。この中身は新築・リフォーム時のシロアリ対策で表にしました。
この記事の要点
- ヤマトシロアリは「北海道北部を除く日本全土」に分布する
- イエシロアリは「神奈川県以西の海岸線に沿った温暖な地域と千葉県の一部、それに南西諸島、小笠原諸島」
- ほかにアメリカカンザイシロアリ(乾材を加害、近年被害増加)とダイコクシロアリ(奄美大島以南)がいる
- ヤマトシロアリは塊状の巣を作らず加害部がそのまま巣になり、被害は建物下部中心
- イエシロアリは大きな塊状の巣を作り、通常数十万頭・大きなもので100万頭。水を運ぶため乾いた木材も加害し、被害は建物全体に及ぶ
- 加害箇所の状態は、ヤマトシロアリが「湿って汚い」、イエシロアリが「乾いてきれい」
- いずれも出典は日本しろあり対策協会のサイト(2026年7月時点)