シロアリ防除の見積書が「シロアリ防除工事 一式 ◯◯円」の1行だけだった、という話はよく聞きます。この1行は比較できません。他社の「一式」と並べても、何が高いのか安いのかがわからないからです。
ただし、この業界には数量の物差しがあります。公益社団法人日本しろあり対策協会が発行している防除施工標準仕様書に、処理ごとの薬剤量と処理範囲が具体的な数字で書かれています。これを知っていれば、「一式」を数量と単価に開いてもらうよう頼めます。以下、その数字と、聞くべきことをまとめます。
標準仕様書に書かれている数量
防除施工標準仕様書(令和7年10月1日発行、2026年7月時点で公開中)の規定は次のとおりです。
| 処理の種類 | 標準仕様書の数量 |
|---|---|
| 土壌処理・帯状散布 | 壁際から帯状に20cm幅で、処理長1m当たり1L |
| 土壌処理・面状散布 | 1m²当たり3L |
| 木部処理(吹付・塗布) | 1m²当たり300mL |
そして、木部処理の範囲(1階)についても書かれています。
基礎天端から1m以内の部分にある土台、火打土台、通し柱、管柱、間柱、筋かい、胴縁及び下地板
ここが重要です。木部処理は「床下の木を全部」ではなく、基礎天端から1m以内という高さの区切りがある。 見積書に木部処理が入っているなら、この範囲を何m²として計算したのかを聞けます。
「一式」と書かれていたら聞くこと
数字の物差しがわかれば、質問は具体的になります。電話でも聞ける項目です。
| 聞くこと | なぜ聞くか |
|---|---|
| 処理面積は何m²か | 数量が出れば、単価が逆算できる |
| 土壌処理と木部処理は別々にいくらか | 工法が違えば数量の考え方も違う |
| 土壌処理は帯状散布か面状散布か | 1m当たり1Lと1m²当たり3Lでは計算の基礎が変わる |
| 使う薬剤の商品名は何か | 協会が防除薬剤製造・販売業者名簿を公開している |
| 協会の認定登録薬剤か | 名簿と突き合わせて確認できる |
| 施工するのはしろあり防除施工士か | 協会のサイトで検索できる |
| 保証の有無と、その内容 | 「保証」の中身は会社ごとに違う |
これを全部聞く必要はありません。前掲の標準仕様書には、発泡施工法やパイプ吹付工法の項に「事前調査及び施工計画」として「工事に先立ち、事前調査を行い、その結果にもとづいて施工計画をたてる」旨が定められています。ただし、その事前調査で処理面積を実測するとは書かれていません。したがって、処理面積を答えられないことが直ちに「面積を測っていない」ことを意味するとは言えませんし、それを業者選定の基準にしてよいという公的な根拠もありません。答えが返ってこなかった項目は、契約前にもう一度書面で確認する、という使い方にとどめてください。
最後の「保証」については、聞くべき中身が別にあります。業者の保証と、新築住宅に付いている瑕疵保険は別の制度で、後者には対象外の定めがあります。詳しくはシロアリ被害に住宅の保険や保証は使えるかにまとめました。
協会が公開している2つの名簿
協会のシロアリ防除についてのページでは、2026年7月時点で次の2つが公開されています。
- しろあり防除施工士の検索
- 防除薬剤製造・販売業者名簿
見積書に書かれた会社名と薬剤名を、この2つに当てて確かめられます。同ページには、標準仕様書及び安全管理基準に基づいて土壌処理と木部処理の両方を行う、という工法の説明も置かれています。見積書に片方しか入っていないなら、なぜそうしたのかを聞く材料になります。
なお、害虫駆除の業界全体で公的な資格・登録制度がどうなっているかは害虫駆除に公的な資格制度は無いが一次資料で追っています。合わせて読むと、この名簿が持つ意味がわかりやすくなります。
ベイト工法は薬剤量の考え方が違う
床下に薬剤を散布する従来の工法とは別に、ベイト工法があります。協会の同じページには、ベイト工法について「従来工法の約千分の一という少量の薬剤を使い」という記載があります(2026年7月時点)。
薬剤の量が桁違いに少ないということは、散布量で見積もりを検算する方法がそのままでは通用しないということでもあります。前掲の標準仕様書のベイト工法の項には、事前調査にもとづいて施工計画を作成すること、設置後に定期点検を行うことが定められています。一方で、契約が何年単位になるかといった契約形態については書かれていません。したがって「年間契約が標準」と言える資料はありませんので、見積書を受け取ったら、設置本数と点検の回数・期間、そして期間が終わったあとどうなるのかを、その業者に個別に確認してください。
「坪いくら」という相場は、この記事には書きません
害虫駆除・シロアリ防除には、公的な料金統計が存在しません。だから当サイトでは相場表を作りません。ネット上で見かける坪単価の数字は、その出所を確かめられないものがほとんどです。
代わりに使えるのが、数量×単価という構造で読むという方法です。
- 処理面積が◯m²
- 土壌処理の単価が1m²あたり◯円
- 木部処理の対象が◯m²
- 薬剤費・人件費・諸経費がそれぞれ◯円
この形に開いてもらえば、2社の見積書を同じ軸で比べられます。総額だけを見比べても、安い方が処理範囲を狭く取っているだけかもしれません。逆に高い方が面積を大きく見積もっているのかもしれません。構造が同じでなければ、金額の比較には意味がないというのがここでの結論です。
「◯◯円〜」という広告表示が最終的な請求とどう乖離するかについては、「550円〜」が十数万円になる仕組みで国民生活センターの資料をもとに分解しています。
その見積もりは、そもそも今必要か
見積書を検算する前に、一段手前の話があります。前回の施工から5年たったという理由だけで再施工が必要になるわけではない、というのは協会自身がQ&Aに書いていることです。詳しくはシロアリ防除は5年ごとに必要かを読んでください。
また、地域によっているシロアリの種類が違い、被害の広がり方も変わります。イエシロアリの分布域なのかどうかで、処理範囲の考え方も変わってきます。ヤマトシロアリとイエシロアリの違いに分布と加害習性の比較を置いています。
訪問販売で契約した後なら、書面の受領日から8日以内は解除できる場合があります(訪問販売の駆除工事は8日以内なら解約できる)。新築やリフォームの段階でどこまで必要かは新築・リフォーム時のシロアリ対策はどこまで必要かで仕様書の側から見ています。
この記事の要点
- 標準仕様書の数量は、土壌処理の帯状散布が幅20cm・処理長1m当たり1L、面状散布が1m²当たり3L、木部処理が1m²当たり300mL
- 木部処理の範囲は「基礎天端から1m以内」の土台・火打土台・通し柱・管柱・間柱・筋かい・胴縁・下地板
- 「一式」と書かれていたら、処理面積・薬剤名・土壌処理と木部処理の別を聞く
- 協会はしろあり防除施工士の検索と防除薬剤製造・販売業者名簿を公開している
- ベイト工法は「従来工法の約千分の一という少量の薬剤を使い」と協会が説明しており、散布量では検算できない
- 坪単価の相場は公的統計が無いので当サイトでは示さない。数量×単価の構造で読む