同じゴキブリでも、種類によって手ごわさの理由が違います。決め手は大きさではなく、世代交代の速さです。
千葉市が公開している生態データを見ると、クロゴキブリの生育期間は1年以上、チャバネゴキブリは2.5〜3ヶ月。同じ時間のあいだに、片方は1世代、もう片方は4世代進みます。この差が、対処の組み立て方を変えます。
千葉市の生態データを並べる
千葉市/ゴキブリの生態と防除方法(2022年8月更新)の記載を、そのまま表にします。
| 項目 | クロゴキブリ | チャバネゴキブリ | ワモンゴキブリ |
|---|---|---|---|
| 体長 | 約30mm | 11〜15mm | 30〜40mm |
| 色・特徴 | 黒褐色で光沢 | 黄褐色、前胸背板に2本の黒斑 | — |
| 生育期間 | 1年以上 | 2.5〜3ヶ月 | — |
| 生涯産卵回数 | 20〜30回 | 5〜7回 | — |
| 産卵から孵化まで | 約40日 | 3〜4週間 | — |
| 分布の記載 | — | — | 九州南部・四国 |
まず見た目の区別です。前胸背板(頭のうしろの板)に2本の黒い筋が入っていれば、チャバネゴキブリです。体長も11〜15mmと小さく、色は黄褐色。一方、30mmほどあって黒褐色に光っていればクロゴキブリになります。ワモンゴキブリは30〜40mmとさらに大きく、千葉市は九州南部・四国という分布を挙げています。
世代交代の速さが意味すること
表の「生育期間」の行を、もう一度見てください。クロゴキブリが1年以上、チャバネゴキブリが2.5〜3ヶ月。孵化までの日数も、約40日と3〜4週間で違います。
生涯産卵回数だけ見ると、クロゴキブリの20〜30回のほうが多く見えます。しかし1世代に1年以上かかるということは、その20〜30回が1年以上に分散するということです。チャバネゴキブリは5〜7回と少ないかわりに、3ヶ月足らずで次の世代がそれを繰り返します。
ここから言えるのは、世代交代が速い種では、対策の効果が続きにくいことがあります、ということです。処理をした時点でいた個体に対して有効でも、短い間隔で入れ替わる集団に対して同じ結果が続くとは限りません。
念のため書いておくと、これは「チャバネゴキブリに抵抗性が発達する」と断定しているわけではありません。生育期間の数字から読める含意にとどめています。薬剤の効き方について公的資料が具体的な測定値を出しているのはトコジラミのほうで、その中身は市販の殺虫剤が効かないトコジラミにまとめました。
千葉市が挙げる防除の4手法
同じページは、防除の方法を4つに整理しています。
| 手法 | 千葉市の記載 |
|---|---|
| 残留処理 | フェニトロチオン等、約1ヶ月効果持続 |
| 噴霧・薫煙処理 | 空間に薬剤を行き渡らせる方法として挙げられている |
| 毒餌処理 | 食べさせることで効かせる方法 |
| 粘着トラップ | 捕獲する方法 |
残留処理の「約1ヶ月効果持続」という数字を、上の生態データと重ねてみます。チャバネゴキブリは孵化まで3〜4週間、生育期間2.5〜3ヶ月。1ヶ月という持続期間は、次の世代が出てくるまでの時間と近い長さです。 1回やって終わりにできるかどうかを考えるときの、ひとつの目安になります。
4つのうち、粘着トラップだけは性格が違います。これは減らす手段というより、どこに何匹いるかを知るための道具です。数日置いてみて、どの場所のトラップに何がかかったかを見れば、対処すべき場所が絞れます。台所の下、冷蔵庫の裏、シンク下、給湯器まわり——場所ごとに置いて比べるのが実際的です。
ホウ酸ダンゴを作る場合の注意
千葉市は、ホウ酸ダンゴの配合も公開しています。
- 玉ねぎ 400g
- 砂糖 大さじ2
- 牛乳 大さじ1
- 小麦粉 140g
- ホウ酸 500g
この配合を家庭で作る場合、乳幼児やペットのいる家庭では使わないでください。 ホウ酸は誤食事故の危険があり、見た目も匂いも食べ物に近いものになります。子どもや犬猫が口に入れる可能性が少しでもある家では、この方法を選ばないという判断が要ります。手が届かない場所に置けばよい、という話ではありません。作った物が家の中に存在すること自体がリスクになります。
侵入と定着を減らすほうの手当て
薬剤や毒餌の前に、環境側でできることがあります。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 段ボールを室内に溜めない | 隙間が多く、卵鞘が付いたまま持ち込まれることがある |
| 排水口・排水トラップの水を切らさない | 乾くと通り道になる |
| 配管まわり・戸のすきまを塞ぐ | 隙間テープや充填材で開口を減らす |
| 生ごみを密閉する | 餌を断つ |
| 冷蔵庫・電子レンジの裏を定期的に掃除する | 暖かく、餌があり、暗い場所が集中している |
侵入口を塞ぐという発想は、ネズミ対策と共通です。ネズミの場合は2センチという具体的な寸法が行政資料に出ています。詳しくはネズミの侵入口は2センチを参照してください。
依頼するときに気をつけること
ゴキブリ駆除は、消費生活相談の伸びがとくに大きい分野です。
国民生活センターが2024年4月24日に公表した「ネットの価格と全然違う!?害虫・害獣駆除のトラブルにご注意」によれば、PIO-NETに寄せられたゴキブリ関連の相談は2018年度43件から2023年度611件へ増えています。同じ期間の全体(シロアリを除く害虫・害獣駆除)が854件から2,290件ですから、ゴキブリの伸び方はそのなかでも突出しています。公表された事例には、約10万円・約15万円という契約金額のものが含まれます。
どうしてこの金額になるのかという構造は、「550円〜」が十数万円になる仕組みで広告表示の側から分解しました。依頼する前に読んでおくと、見積書のどこを見ればいいかが分かります。
この記事の要点
- クロゴキブリは約30mm・黒褐色で光沢、生育期間1年以上、生涯産卵回数20〜30回、産卵から孵化まで約40日
- チャバネゴキブリは11〜15mm・黄褐色で前胸背板に2本の黒斑、生育期間2.5〜3ヶ月、生涯産卵回数5〜7回、孵化まで3〜4週間
- ワモンゴキブリは30〜40mmで、千葉市は九州南部・四国と記載
- 世代交代が速い種では、対策の効果が続きにくいことがある
- 千葉市が挙げる防除4手法は残留処理(フェニトロチオン等、約1ヶ月効果持続)/噴霧・薫煙処理/毒餌処理/粘着トラップ
- 粘着トラップは減らす道具というより、生息場所と数を確かめる道具
- ホウ酸ダンゴの配合は千葉市が公開しているが、乳幼児やペットのいる家庭では使わないこと
- 国民生活センターのデータで、ゴキブリ関連の相談は2018年度43件から2023年度611件に増加